■本日の気になるニュース
日立が1兆円でアメリカのIT企業を買収するとのこと。
■買収対象会社
買収金額が1兆円とのことで、どんな大きな企業を買ったのかと広報発表資料を確認してみたのですが、なんと20年度の売上高は921M US$(約1,013億円)しかないとのこと。
調整後EBITDA率は23.7%とのことなので収益性は高いようですが、それでも金額にするとわずか約218M US$(約240億円)しかありません。
※日本円は本日3/31の為替レート:1US$=110円で換算
■EV/EBITDA倍率
EBITDA率は高いとはいえ、買収金額は約1兆260億円・・・・。
EV/EBITDA倍率は、42.8倍・・・・
ちなみに日本電産の永守さんは、EV/EBITDA倍率が8倍以上の買収は基本見送るそうです。代替候補先がなく、多少プレミアムを高く積んでもどうしても買収したいということであれば8倍以上出すこともあるそうですが、それでも42.8倍はないですよね。。。。
日立の経営陣はどうやってこのキャッシュアウトを回収するつもりなんですかね?投資回収に失敗するイメージしか浮かんできません。
■将来予想の前提条件
よくこんな買収を意思決定したなと思いながら広報発表資料を読んでいたら最後のページ「将来予想に関する記述」というページがありました。
文字が小さくて見えないと思いますが、25個の変動要因があるとのこと。ロイターの記事には、7年後の28年度には調整後EBITDA1億US$(1,080億円)超の達成を見込んでいるとありますが、25個も変数があったらこの見込みも相当怪しいですね。
■M&Aは負けから始める投資
13:00前に日経がこの買収を発表した途端に日立の株価は急落。財務体質の悪化を懸念した売りとのこと。そりゃそうですよね。
「ゴールドマン・サックスM&A戦記 伝説のアドバイザーが見た企業再編の舞台裏」という本を書いた服部 暢達さんは「M&Aというのは負けから始める投資」と言っています。
今回の日立のM&Aは、まさに服部さんが仰っている通りの失敗の方程式にハマっているような気がします。金額だけでなく、アジアの会社の日立に白人のアメリカの新興IT企業をコントロール出来るとのも思えないので、このM&Aは失敗する可能性が非常に高い気がします。
ちなみに服部さんのM&A戦記も面白いので、機会があればぜひ読んでみて下さい。