備忘録も兼ねて、エミンさんの新刊の内容を簡単にブログでメモしておきたいと思います。大変読みやすく、元気が出るポジティブな本でした。
<はじめに>
- 2020年は株高で始まり株高で終わった。年初にイラン革命防衛隊の最高司令官、年末にはイラン核開発責任者が暗殺。年初にコロナ第一波、年末に第三波。いろいろな出来事が螺旋を描きながら起きている感じ。
- 2020年最大の変化はDXの加速。在宅勤務等、日本企業が変わらざるを得なかった。
- エミンさんは医療と金融のDXに注目。日本の金融は現金使用率が高く、いまだにアナログな部分が多い。
- 新型コロナにより、キャッシュレス&タッチレスが加速。ビットコインも史上最高値を更新。
- 国家と金融筋はいつも戦ってきた。そして国家が最終的に勝利してきた。
- 日本でも江戸時代、堂島の米市場を設立した淀屋という豪商が資産約300兆円を築くも江戸幕府により没収されている。
- 現在でも、Facebookが発行しようとしたデジタル通過”リブラ”を米政府が中止させ、中国ではアリババグループのジャック・マーも財産を没収されるかもしれない。
- 中国ではキャッシュレスが進んでいるが、便利になる一方、国家の管理下に置かれる事態が起きている。国家の監視を制限する規制作りも必要。現在は、歴史の大きな変換点におり、難しい課題にチャレンジしていくことになる。
<第1章:コロナ・ショックで進む世界経済のブロック化>
超・新冷戦の時代
- 2018年秋頃から既に世界は新冷戦時代に突入していたが、新型コロナで超・新冷戦時代の状況を迎えた。
- 新型コロナにより世界経済のブロック化が加速。
- 現在のアメリカと中国の関係は冷戦下の米ソ関係よりも複雑。対中批判は、トランプ前大統領、ポンペオ前国務長官からだけでなく、多くの共和党議員の中からも上がっている。
- 中国国営報道機関の新華社通信が中国において医療器具・医療品製造メーカーを脅迫し、また感染初期に3Mの中国工場の製品を中国当局に押さえられたこと、さらに中国が世界中でマスクを買いまくったこと等、アメリカからの不評を買った。
- バイデン政権になったものの、民主党も共和党とトーンは違えど中国に対して強硬姿勢なのは一緒。
- 今回の新型コロナを機に、中国に進出していた多くの企業が次々に中国から生産拠点を移す可能性もある。
20世紀への逆戻り
- アメリカで冷戦時代に制定された国防生産法という連邦法を蘇らせた。
- ニューディール政策的な国家規模の大型公共事業が増える可能性あり。
- 日本企業も今後メイド・イン・チャイナがアメリカで売れなくなることも視野に入れておく必要あり(→先日任天堂がマレーシアでの受託生産を開始するとのニュースが流れていたのもそのためなのかもしれません)
- 今回のパンデミックが、世界の様々な変化を促進する触媒”カタリスト”になっていく。
習近平体制はより強固に
- 今回のコロナ禍で、国家的な危機を迎えた時は、強権的な政治制度(中国共産党の一党独裁)が効率的に機能することを証明してしまった。。。
- 中国の監視システムの優秀さがわかり、さらにバグや間違い、エラーも修正され、中国共産党の支配力を強める結果となった。
- 但し、中長期的には中国の経済的な弱体化は避けられない。
台湾
- 中国が台湾を「一つの中国」を主張し、また香港の一国二制度が実質的に反故にされたため、よりインターナショナルな役割が与えられると予想される。米中対立が激化すれば、アメリカが台湾独立を認める可能性もあり。
原油価格抗争
- サウジのムハンマド皇太子は、トランプ政権と非常に密接な関係だったので、アメリカのエネルギー産業へのダメージを考慮し、サウジが原油価格抗争を仕掛ける目に事前にアメリカから承諾を受けていた可能性が高い。
- サウジは、原油市場でシェアを伸ばすことで、もう一度産油国の中でリーダーシップを発揮したいという思惑あり(今はアメリカが世界1位の産油国)。
- また今回の新型コロナのパンデミックで経済が破綻しかけているイランを倒したいという狙いもあるのでは?であれば、一帯一路の要所にあたる地政学的に重要な位置にあるイランを倒すことはアメリカとも利害が一致している。
- 尚、原油安は日本経済にプラス。
イラン
- 2020年年初のソレイマニ司令官の暗殺は、それまでにいくつもの伏線あり。ホルムズ海峡沖でアメリカの無人機撃墜、サウジの国営石油会社のミサイル攻撃、バグダッドのアメリカ大使館敷地内への群衆の乱入等。
- 2018年5月のトランプ政権のイランとの核合意からの離脱以降、アメリカからは経済制裁、イランは合意に関わる制約を破棄し続けている。
イギリスEU離脱
- リベラリズム、グローバリズムを標榜する代表的な国のイギリスが離脱することで、EUのローカル化、アンチ・グローバル化が進む。
- EUとアングロサクソン世界の関係も薄くなる。
- EUを牽引してきたドイツの影響力がより強くなっていく。EU加盟国がアメリカのように反中的にならず、中立的に中国よりに動く可能性もあり。
ロシアと中国
- ロシアは、原油価格攻勢に強気な態度を取れるのは、資金/技術/生産設備がある中国が裏にいるから。
- 一方、中国は、アメリカと軍事的な衝突が起きた場合、中国のエネルギールートがアメリカ海軍により閉鎖される可能性があり、その場合、中国はロシアの資源に依存せざるを得ない。
- つまり、ロシアと中国は依存しあう関係。だが、実は両国は旧ソ連時代、敵対していたのでロシア人は中国共産党があまり好きではない。
日本の役割
- 対外債務の1/4を中国に負っているパキスタン等、世界には財政的に困窮している国が多い。
- その中で、日本は、道路やインフラ、社会インフラ等多くの課題を抱えているアフリカ地域に日本が貢献出来る分野は相当に広い。
- アフリカ各国のみならず欧米諸国からの期待も大きいので、日本にとっては戦後続いてきた敗戦国の扱いから抜け出せる歴史的なチャンスになる可能性あり。
<第2章:戦後最大の好景気が訪れる>
コロナ禍をきかっけとした経済危機は起こらなかった
- コロナ禍で株価の急落が起こったので、経済危機がドミノ現象のように世界中で起きるのではないかという懸念が広がったが、経済危機を回避するための大規模な経済対策をアメリカも欧州も打ってきたため起こらなかった。
- 主要国の景気先行指数は瞬間的に下がり、下げ幅もリーマン・ショック並みだったが、リーマンと違って底打ちも早かった。
- G20メンバー国がコロナ・ショックの発生から3カ月間で行ったローンや政府保証を除く財政出動はGDPの4.6%を上回る。リーマン・ショック時は、同等の財政出動は3年間かけて行った。そのため株価の回復も早かった。
- また前代未聞の金融緩和により日欧米の中央銀行の総資産は、10年前に比べ3倍に膨らんだ。FRBの総資産は3ヵ月で3兆㌦(約330兆円)増え、足元で7.1兆㌦。
- 株価が急速に回復した理由の一つは、ワクチン期待。新型コロナ関連の論文は、20年5月時点で既に1万本を超えた。米中新冷戦でワクチンの開発競争も過熱。論文の株もアメリカと中国がトップ。
日本経済の回復
- 今回の大規模な財政出動による金融緩和により、次第にインフレが発生していく。インフレになると現金が目減りする。
- 19年12月末の日本金融資産残高1,903兆円のうち、現預金は1,008兆円(53%)。インフレになるとこの現預金の一部が株や不動産、その他リスク資産に流れる可能性が高い。
これからの世界の政治・経済
- これからの世界は、「アンチ・グローバル化」、「政治:内政重視」、「経済:内需重視」。
- 米中貿易摩擦、イギリスEU離脱、実質的な香港の一国二制度の破棄、ロシアのプーチン政権長期化への動き等がそれらを表している。
- グローバル化の中で成長してきた企業は、国境やイデオロギーにとらわれないで投資してきたが、今まで問題視されなかった投資が荷物になる可能性あり。例えば、ソフトバンクの中国投資、知財保護の観点から中国人エンジニアのビザ取得が困難になっているシリコンバレーへの投資等。
- 中国は一党独裁体制の国であるが、純粋な共産主義国とはやや異なる。とりわけ鄧小平の時代から資本主義経済を取り入れているので、中華思想を中心に置いた”新しい形の社会主義国家”になったと言えるかもしれない。
<第3章:通貨の歴史 お金の誕生から貨幣の登場まで>
進むキャッシュレス化
- 今の世の中では、クレジットカード、Suica等の交通系ICカード、仮想通過等キャッシュレス化が進んでいる。
- 通過の歴史を振り返ると、過去に3度の通貨革命があった。1度目はコインの誕生、2度目は紙幣と銀行の誕生、3度目は電子マネーの登場。
お金の誕生
- 紀元前約3,000年の古代メソポタミア文明の時にお金に似たようなものがあったとされている。他にもそれぞれの文明や地域において、お金の代わりになるものが登場していた。アステカ文明のカカオ豆、インドのアーモンド、南米のコーン、日本ではお米等。
- 現在の我々が知っているお金は、今から2,600年前の紀元前640-630年にトルコ西部にあったリディア王国で誕生。金銀合金のコインを作って通貨として利用。金は酸化しないし腐食しない(保存性)。リディア王国は、世界初のショッピングモール的なマーケット、カジノ等もあり、人間の基本的な欲求を満たすシステムを世界で最初に作り上げた。
- リディア王国は紀元前547年に滅亡したものの、その後お金の習慣は、隣国のギリシャに移っていった。ギリシャはお金のシステムを取り入れ著しく発展。文化、芸術、学問が発展。お金は計算が必要なので数学も発展。
- お金のシステムにより、国家群・階級制度等が設けられた。また物物交換では出来なかった目に見えないもの(知恵やノウハウ等)を現金化することが出来るようになった。
- エミンさんが考える人類の営みを大きく変えたものは、①農業、②お金、③インターネットの3つ。
銀行の誕生
- 1118年にヨーロッパからエルサレムに向かう巡礼者は、護衛役のテンプル騎士団にフランスでお金を預け証書をもらい、エルサレムに到着すると自分のお金を引き出すことが出来た。つまりテンプル騎士団により世界発の国際銀行的な役割が作られた。(その後、テンプル騎士団は資金力を蓄え過ぎたため、資産に目が眩んだフランス国王・フィリップ4世により濡れ衣を着せられ消滅)
- その後、イタリアで銀行が誕生。キリスト教は利息を取ることは禁止されていたが、イタリアの銀行は、抜け道として異なる通貨での返済するシステムを考案(為替の計算に利息を含ませる)。
- イスラム教も利息を取ることは禁止しているが、イスラム金融では、金等お金以外でワンクッション置いたり、分割払いにすることで利子を含んだ金額を返済する抜け道で利息を取っている。
紙幣の誕生
- 世界初の紙幣は、中国北宋時代の「交子」と言われているが現存なし。元の時代にフビライ・ハンが紙幣を流通させたと言われている。
- 欧州では、1661年にスウェーデンの民間銀行ストックホルム銀行が最初の紙幣を発行。その後、18世紀初頭にフランス中央銀行、イギリスのバンク・オブ・イングランドが発行するようになった。
アメリカドルの変遷
- イギリス植民地時代は、イギリス通貨を使用。
- 独立戦争中(1775年4月~1783年9月)は、東沿岸部の13の植民地は、それぞれ紙幣のようなものを通貨としていた。戦争後は、紙幣を刷らず。
- 南北戦争中(1861年~1865年)は、南北両方が戦費を賄うために紙幣を大量に印刷。戦争後は、敗者の南部では酷いインフレとなり、南部に貧しい人が多くなるという現在まで続く格差が生まれる原因となった。
- 第一次世界大戦後は、ドル本位制の金融システムを構築。その後、ドルを約40%切り下げ、そこで生まれた30億㌦の財源を大恐慌後の復興に充てた。
- 第二次世界大戦終結時に、新たな国際金融システム、ブレトンウッズ体制へ移行。金1オンス=35㌦と公定価格を定め、金兌換制度のもとアメリカドルを国際機軸通貨とする金・ドル本位制が敷かれた。
- 1945年12月に国際通貨基金(IMF)、国際復興開発銀行(IBRD)が29か国で創設。
- 戦後は、ベトナム戦争での戦費拡大による不況、日本/欧州の経済好況化により、それまでの通貨体制が維持できなくなり、1971年8月にドルの金兌換を停止し、実質的なドル切り下げによるドル・ショック(ニクソン・ショック)が発生。1973年から変動相場制に移行。
世界の取引所
- 1531年、ベルギーのアントワープに世界初の商品取引所が設立される。
- 1602年、オランダ東インド会社によって、株券や債券を売買するために世界最古の証券取引所がオランダのアムステルダムに設立される。
- 日本では、江戸時代(1652年~1673年)に、大阪に米穀取引所が設立される。1730年に8代将軍徳川吉宗により、堂島に世界初の先物取引市場である帳合米取引所が公設される。
- 日本の株式市場は、1878年6/1に東証の前身の東京株式取引所が取引開始。
<第4章:電子マネーと仮想通貨の登場>
クレジットカードとポイントカード
- 約70年前にクレジットカード的なものが誕生。その後、1950年にダイナースクラブ、1958年にアメックス/バンカメカード(後のVISAカード)、1967年にシティバンクのエブリシングカード(後のマスターカード)が登場。
- 新興国では、カード会社のリスクが高く、なかなかクレジットカードが普及しないが、いったん流行り出すと急速に利用者が増加していく。
- 日本は先進国だが、現金信仰が根強く、海外に比べて未だにクレジットカードの利用者は少ない。但し、一人当たりのカード保有数はシンガポールの10枚に次いで2位の7.7枚。カードはたくさん持っているもののあまり利用しない傾向あり。
- ポイントカードが初めて登場したのは、航空会社のマイレージカード。マイルを無料航空券に交換出来るサービスをアメリカン・エアラインズが始めたところ大人気に。
- 今では、コンビニ、家電量販店、百貨店、スーパー等様々なポイントカードが発行されている。
金融機関の総禁システムとATM
- 1973年に世界中の金融機関が出資・設立したSWIFT(国際銀行間通信協会、本部はベルギーのブリュッセル)という組合の形で世界的な送金システムが出来た。
- SWIFTは、金融機関相互の取引、仮想通貨に関する情報伝達を高いレベルの安全性で提供。200以上の国・地域から約9,000の金融機関が使用。
- ATMが初めて設置されたのは、1967年6月、ロンドン北部のバークレー銀行の支店。
- 初の電子株式市場として注目されたNASDAQが設立されたのは1971年。
お金の歴史
- 10,000年~2,500年前:物物交換、カカオやアーモンド等のお金に似たシステム
- 2,500年前:コイン
- 約400年前:紙幣
- 70年前:クレジットカード
- 50年前:電子マネー
- 25年前:インターネットバンキング
- 12年前:仮想通貨
- お金のシステムの変化が年を追うことにどんどん加速しており、今後10年、20年で従来のマネタリー・システムが激変する可能性が非常に高い。
日本:キャッシュレス化の黎明期
- 日本でキャッシュレスが普及しない理由は、①治安の良さ(夜間でも安心してATM利用可能。ATMもコンビニにあり近く多数あり)、②紙幣が綺麗、偽札が少なくキャッシュへの信頼性が高い
- 日本の現金流通高に占める1万円札の割合:93%(タンス預金が多い)
- クレジットカード利用可能な東京都の飲食店:47,000店(全体で132,000店)
- 現金関連コスト(印刷、輸送、店舗設備、ATM費用、人件費等):1兆円/年
- 金融機関の現金管理/ATM運用コスト:2兆円
- 小売/外食関係での現金取扱業務の人件費:約6兆円
- 現金しか使えないことに不満がある訪日外国人:約4割(VISA調べ) 訪日客が4,000万人の場合、約1.2兆円の機会損失が発生
- キャッシュレス化移行により発生する経済効果:約10兆円(みずほFG試算)
進むキャッシュレス化
- 2015年時点の日本のキャッシュレス決裁比率は18.4%と世界的には低い。2017年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017」では2027年までに当該比率を4割程度まで上げることを目標としている。
- 決裁比率1位は、韓国の89%。1997年のアジア通貨危機以降、脱税防止等を目的とした政府主導のクレジットカード利用促進があったため。また中国も60%と高い比率だが、中国共産党が資産を監視する目的でキャッシュレス化を進めていると思われる。
- 2015年以降、スウェーデンでキャッシュレス化が進んでいる。リーマンショック後の貧困、移民の増加による強盗事件の増加、人口密度が小さいことによる現金輸送の非効率性、寒い気候等が影響している。キャッシュレス化を促進するため、法律で現金を受け取らなくてもよい権利をお店に与えており、日本でも今後、同様の法律が導入される可能性あり。
中央銀行に干渉されないビットコイン
- 国家はビットコインが自国通貨に変わることを簡単に承認すると考えない方がよい。
- 現実的な経済活動と国家が管理する金融システムとの間には、常に齟齬があり、両社の方向性が一致することはないため。
- また米国も米ドルの基軸通貨というポジションをビットコインに奪われたくない。
- そのため、ビットコイン、仮想通貨は普及していくと思われるが、その流れが急速にメインストリームになっていくと、かつてのテンプル騎士団のように国家に潰される可能性がある。
- ただし、2020年12月末時点で、ビットコインの規模は、時価総額で約3,300億㌦(約35兆円)に過ぎないので、国家としては放置しておいても問題ないと考えているのかもしれない。
- ビットコインには匿名性があるので、お金の移動を知られたくない人達(タックスヘイブン、マネーロンダリング、中国人の海外送金等)からのニーズがあるので、そう簡単にはビットコインはなくならない。
<第5章:日本が世界をリードする時代>
中国の成長ストーリーは終わった
- 今回のコロナ禍の影響により、中国リスクの大きさを明らかになり、今後アンチ・グローバル化とブロック経済化が進み、脱中国化が進んでいく。
- 日本政府は、20年4月に日本企業の生産拠点の脱中国化を資金援助することを発表。
- これまでの中国は、安い労働力(人口ボーナス)を最大限に活用し、急成長をしてきたが、今後はバブル崩壊後の日本のように低成長モデルに移行せざるを得ない。
- 中国は、2001年にWTO(世界貿易機関)に加盟した際に途上国であると自己申告しており、今でも途上国扱いとなっている。WTOは途上国に対して自国の産業を保護するために輸入品に高い関税を課したり。先進国市場に安く鉱業製品を輸出できることを認めている。今回の米中貿易戦争でこれらの実態が明らかになってきたので、中国はこれまでのように輸出産業で経済成長を図るわけにはいかなくなる。
- 中国国内での投資は、GDPに占める割合は50%弱と高いものの基本的には全部債務であり、どんどん借金を増やしている状態。
- 限界資本係数という1のアウトプットを得るのに必要となる資本投入を示す指標だが、高度成長時代は2-3だったものが、現在では8となっている。そのため投資効率が悪く、また中国への投資リスクが顕在化しているので、中国への投資は減っていくと予想される。
日本の新紙幣
- 2024年に刷新される日本の新紙幣は、これからの日本を予言している。
- 10,000円札:日本の資本文化の父:渋沢栄一➡好況な景気。
- 5,000円札:津田塾大学創立者:津田梅子➡女性の活躍
- 1,000円札:日本細菌学の父:北里柴三郎➡健康・安心・安全
- 渋沢栄一は、欧米の資本家と異なり、自分の富だけを築こうとした人間ではなく、国の発展を第一に考え、目先の利益ではなく、和を大切にしながら長期的なビジョンを持って、日本的な資本主義の考え方をする人物だった。
- アメリカでも2019年8月に経営者団体ビジネス・ラウンドテーブルが「株主第一主義」を見直し、従業員や地域社会の利益を尊重した事業運営に取り組むと声明を出している。日本企業が長年行ってきた全てのステークホルダーの利益に配慮した経営思想と方向性が同じになってきている。
日本の長寿企業
- 創立100年以上の企業は全国に33,259社(全体の2.27%)
- 業種:製造業8,344社、小売7783社、卸売業7,359社等
- 年商:1億円未満13,786社、1-10億円未満12,986社
- 都道府県別:京都の会社が全体の4.73%
- 世界の創立200年以上の企業のうち約45%は日本の企業
- 世界最古の企業は、創立1,442年の建設会社・金剛組
日本の観光立国化
- 今回のコロナ禍で訪日外国人観光客の数は激減したが、日本の観光立国化は回復していく。
- 中国以外のアジア諸国も経済発展を遂げており、合わせると人口は約6億人になる。これらの国々の人が安心していけるアジア圏の国と言えば日本である。日本ほど景勝地が多く、様々なレジャーや食事が楽しめる国はない。
- 和のおもてなしを含めてクール・ジャパンというソフトパワーは中国にはなく、爆買いするような中国人団体客ではなく、日本の文化を本当に楽しむ人たちをターゲットに新しい形で日本の観光事業は発展していく。もちろん欧米からの観光客も大勢来日することが期待できる。
日本の強力なソフトパワー
- 日本には、マンガ、アニメ、ゲームという強力なソフトパワーがある。
- 日本料理店は、他の料理にはない上質なコンテンツパワーを持っている。
- またポケモン、スーパーマリオ、ハローキティ、ドラゴンボール等の世界的なコンテンツもある。
- これらのソフトパワーを持つ日本株は大復活する可能性を秘めている。
リモートワーク
- 今回のコロナ禍を契機として従来の働き方を変える大きな出来事となったリモートワークの普及。
- ワークスペースを提供する事業者の登場や地方への移住等、付随して様々な動きが出てきている。
- 将来的には、5Gの普及により、VRが一般的となり、出勤せずバーチャルなオフィスで仕事をする時代が来るかもしれない。子育てで通勤出来ず退職せざるを得ない女性が会社を辞めなくてもすむようになるので、女性の活躍も進む。
東京オリンピック
- 冷静に考えるとコロナ禍が収まらないうちは東京オリンピックの開催可能性は低いように見える。もしもクラスターが発生したら世界中から叩かれることになり、誰も責任を取れない状況となってしまう。
- ワクチンも先行き不透明だし、2022年の冬季北京オリンピックは、米中関係の悪化により参加予定国がボイコットする可能性もある。
パンデミックのサイクル
- 1918年のスペイン風邪以降、40年→10年→40年→10年のサイクルでパンデミックが起きている。
国際金融都市
- 中国が香港の一国二制度を事実上反故したため、香港市場を丸ごと日本に移すチャンスがきた。今アクションを起こさないと、このような絶好のチャンスは二度と訪れない。
- 米中対立しているからこそ、国際金融センターを米国と敵対している国には置きたくないことは明らかなので、代替地として丸ごと日本に誘致する行動を即取るべき。
- 規制を全て香港並みに変えるための法改正が必要。また経済特区、自治区をつくる等の改革も必要。
全世界でこれからインフレが発生する
- コロナ対策として全世界で大規模な経済対策を打ち出したため、世界中でお金を刷りまくっている。
- また、コロナ禍で供給量が減っており、NINTENDO SwitchやPS5がなかなか手に入らず転売ヤ―が高値でネットで販売する事態も発生している。
- これまでのデフレは中国によってもたらされていた。医療品、生活雑貨、家電、家具、工業用部品等が中国で製造され、海外企業も賃金が安かった中国に生産拠点を置いていた。しかし、今後中国製品はブロックされ、結果、価格も上昇していくと予想される。
- これは、日本にとっては、付加価値の高い日本製品が購入されるようになるので悪いことではない。
- インフレの時代が来たら、現金を持っている人は目減りするので要注意。反対に借金を抱えている人は固定金利であれば得をするので、固定金利でローンを組めるのであれば不動産を購入するのもよい。国債は金利が上昇して価格が下がるので買うべきではない。金や株式といったリスク資産は上がる。ビットコインもリスクヘッジ資産となる。
- デフレの時はキャッシュ・イズ・キング、現金を持っているものが強い。反対にインフレの時は、キャッシュ・イズ・トラッシュ、現金を持ってはいけない。
アメリカ大統領選挙
- バイデン政権の人事の布陣を見れば、バイデン政権の方向性が見えてくる。
- 外交政策:アメリカ・ファーストの論調はやめるが、対中強硬姿勢は継続。但し、米中貿易摩擦が主軸ではなく、人権・民主主義・少数民族への弾圧等理念の戦いにシフトしていく。トランプ政権の反中は金で解決できるが、バイデン政権の反中は金で解決出来ないというのが重要なポイント。
- またトランプ氏の反中姿勢は、実は本格的な対立を望んでいない。トランプ氏の最大のスポンサーはカジノ勢。今のアメリカのカジノ大手の収益はほとんどはマカオからきている。マカオは中国の一部であり、習近平の一言でカジノを閉鎖出来ることを考えると本気で中国と対立したいとは考えないはず。
- バイデン当確で、中国が急いでRCEP協定にサインし、またTPPにも加入しようとしている点は、アメリカが再び同盟国をまとめ、中国包囲網によって孤立化を余儀なくさせられるのではないかという焦りがあるため。
- TPPはもともと中国包囲網を形成するために作られたもので、中国が加入する等本末転倒。
- トランプ政権であれば、同盟国も敵に回す可能性があるので、中国が孤立することもなかったが、バイデンになることで孤立化の可能性が高まり焦っていると考えられる。
- またロシアやトルコ等もトランプ政権であれば、紛争等に介入してくる恐れがなかったので、好き勝手やっていたが、バイデン政権になることで無視できなくなったので、全世界のポピュリスト・リーダー、独裁者にとってトランプ氏の敗北は大きな衝撃となり、世界に大きな変化をもたらした。
<第6章:日経平均は2050年までに30万円に!!>
コロナ・ショックによる暴落は歴代4位の大暴落
- 20年3月の下げ幅は、2月高値と3月安値で東証再開後71年の歴史で歴代4位の大暴落。
- 1位:2008年10月 リーマン・ショック時の44.2%
- 2位:1953年3月 スターリン・ショックの35.3%
- 3位:1990年9月 バブル崩壊第一波による32.0%
- パンデミックの場合、過去に6度大暴落を経験しているが、12か月後を見ると全てのパンデミック発生時で株価は上昇している。
半導体市場が底打ちした後、株式市場が底打ちし上昇していく
- 東京エレクトロンを見てみると過去20年間で5回前年マイナスからプラスになっているが、半導体市場が先行して底打ちした後に株式市場が底打ちするケースが多い。
5Gが株式市場を牽引し、NYダウから日経平均に主役が代わる
- 世界の5G競争は「覇権争い→絶対に負けられない→5Gで遠隔が可能に→テレワークに絶対必要→新型肺炎でも投資は絶対に止められない」となり、半導体関連がこれらから盛り上がることを意味している。
バフェット氏はなぜ5大商社株を買ったのか?
- 日本株は世界で究極のバリュー投資銘柄としてターゲットになっている可能性あり。
- バフェット氏の投資は、ビジネスモデルがシンプルで、CFを生みやすい大企業を長期保有するスタイル(代表例:コカ・コーラ)。
- 日本の商社株は、時価総額が比較的小さく、PBRは1倍割れしており、営業CFとFCFはプラス、時価総額を営業CFで割ったPCFから判断するにかなり割安といえる。しかも配当利回りは高い。
日本が世界をリードしていく
- エミンさんはコロナ禍が終息すると同時に世界的に金余りとなって、日経平均は3年以内にバブル時代の史上最高値を超え、5年以内に5万円に到達すると思っているとのこと。
- そして、2030年までに8万円、2040年までに16万円、2050年までに30万円に達すると予想している。
- ただし、一直線に上がることはないので、一旦大きな調整も入る。特にアメリカ大統領の任期一年目の株価パフォーマンスはあまりよくないので、2021年前半に大きな株価調整があるかもしれない。これは個人投資家にとっては大きな買いのチャンス。
- 世界の株式トレンドは、今後、グロース(成長)からクオリティ(品質)へとシフトしていく。
- ソフトバンクのビジョン・ファンドは典型的なグロース・ファンドだったが、天先的な投資家の孫正義といえども世の中の流れを感知出来なかった可能性がある。
- これは、今までグロースの代表格は中国だったが、これからはクオリティの日本、両方備えたアメリカにシフトしていくということ。特に日本は、今後評価されていくことは間違いなく、日本が世界をリードしていく。
<おわりに>
- ビットコインが市場最高値をつけたことは、世の中の変化の加速度が増していることを証明している。
- ファイザーのワクチンを開発した独バイオンテック社の創業者ウール・シャヒン博士によれば新型コロナ・ウイルスは少なくとも向こう10年間はなくならないとみているとのこと。
- GAFAMの株価は上昇を続けており、時価総額は膨張し先進国のGDPに匹敵するレベルとなっている。テスラの時価総額は世界の巨大自動車メーカーの時価総額合計を超えている。
- テスラなどは特にバブルの代表例といえるが、バブルは必ず弾ける。アメリカだけでなく中国でも長年の過剰設備投資、不動産投機による資産インフレと不良債務問題が表面化しつつあり、中国バブルは崩壊しかけている。
- このグロース株のバブルが崩壊した時に世界でバリュー株の時代が始まり、究極のバリュー株である日本株に世界中の資金が流れ込む。
- ITバブル崩壊後もグロースからバリューに流れが変わったが、今後はもっと大きい規模でその現象が発生すると考えられる。
- 世界はコロナパンデミックをきっかけに新たなパラダイムにシフト。各国がパンデミックと戦っているが、日本はこの戦いに勝利している国の一つ。20年12月28日の日経新聞によると、20年1-12月の死亡者数は前年同期に比べて14,000人も少ない。世界規模のパンデミックが起きているのに死者数が減っている国はおそらく日本だけ。
- 日本人は今までも様々な存亡の危機に直面し、すべて乗り越えてきた。国民としての優秀さが目立っている。エミンさんが21世紀が日本の時代になると心から信じているし、日本という国の力とポテンシャルを信じて欲しいとのこと。