大企業における ”慣性の法則”

■本日の気になるニュース

日経電子版で、ANAが紙の時刻表を廃止し、オンライン版に完全移行するとのニュースが出てました。

www.nikkei.com

私は20年ほど前に印刷会社に新卒で入社したのですが、当時からいずれ紙の時刻表はなくなるので、電子化に対応出来る体制を構築しなければなどと言われていました。JRはいまだにあるようですが、ANAの時刻表がついになくなってしまったかと感慨深いものがあります

 

■ANA時刻表

ANAの紙の時刻表は、2カ月に1回、年間6回発行されており、編集費/印刷代/発送費用等で約1.5億円/年のコストが発生していたそうです。

万が一誤植があった場合は、訂正ペラを差し込んだり、最悪刷り直しということもあります。トラブル発生時の対応で発生する追加コストや労働時間増加による人件費増等を考慮すると見えないコストもかなりあるのではないかと思います(もちろん印刷会社は、責任回避のため顧客の担当者から校正内容に間違いないことを確認してもらい校了印をもらいます)。

ANAによると新型コロナ感染前から検討を進めていたとのことですが、個人的には、新型コロナがなければ検討期間はさらに長いものとなり、オンライン版への完全移行はもっと後だったのではないかと思います。

 

■大企業における”慣性の法則”

なぜなら20年前からなくなると言われ続けてきたのに、未だに廃止されていなかったことを考えると、歴史の長い大企業では、相当な外圧がなければ何かを変えるということはなかなか起きないという”慣性の法則”が働くからです。

大企業では、長い間続けてきたやり方を変えることは、いろいろ社内の根回しをしなければいけません。また、変えたことで万が一上手くいかなかった時に誰かが責任を取らなければいけなくなります。誰も自分がリスクを負ってまで何かを変えようとは思いません(実際には、やって失敗したとしても、意思決定までの間に誰の責任なのかよくわからなくなり、誰も責任取らないパターンが多いのも大企業なのですが・・)。

また大企業にはよくあるパターンですが、そのやり方で上にいった会長や社長、相談役等が社内にいると、そのやり方を変えることは、その方達自身を否定することになってしまうため忖度して変えないことが無難となることも多いと思います。

 

■大企業が変化をする時

しかし、さすがの大企業も今回のコロナのような世界的なパンデミックでは、従来のやり方を踏襲している場合ではなく、変化しなければ生き残ることが出来ないと感じ始めているのではないかと、今回のANAの紙の時刻表の廃止のニュースを読んで、感じました。

大企業の従業員は、自分から進んで変えようと思わない傾向はありますが、法令改正等の外圧により変えざるを得ない場合は、非常に迅速に、かつ抜け漏れなく完璧に対応する能力をもともと持っている人達です。

今回の新型コロナのパンデミックは、厳しい状況ですが、体力のある大企業は今まで踏襲してきたやり方を見直しして、本当に必要なことと止めた方がいいことを選別するいいチャンスとも言えます。いつかコロナが収束した後に、この機会を利用して進化出来た大企業とそうでなかった大企業は、大きな差となって表れてくると思います。

 

■私の古巣の印刷業界は、、、

しかし、私の古巣の印刷業界は厳しいですね。もともと利益率の低い業界でしたし、コロナ前から印刷市場は縮小が続いており、同時に単価下落に拍車がかかり低い利益率が更に低くなるという厳しい状況でした。今回のコロナでANAのように年間数億円規模の紙の印刷のオーダーを止める顧客も出てくると思います。

古巣の業界なので、どっかの印刷会社の株を買って応援したいなとも思うのですが、凸版とDNPは潰れることはなくても、印刷業界は斜陽産業であることは間違いないのでどうも買う気になりません。唯一買ってもいいかと思うのでは、業界3位のトッパン・フォームズくらいですね。とは言え、ここも約60%の株を凸版印刷が保有しているので将来凸版がTOBを実施するかもしれないというプレミアム期待だけで、この会社自身が大きく成長することはないと思っています。

 

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