年末の日経新聞に東証の再編に関する記事がありました。
日本取引所グループのWEBサイトのプレスリリースを見てみたのですが、昨年の2/21に新市場区分についての概要を発表しておりまして、今回の記事はその内容に則って再編することを決定したとのことだったようです。
当時のプレスリリースの概要を以下の通り整理してみました。
■市場区分見直しの目的
- 上場会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を支える
- 国内外の多様な投資者から高い支持を得らえる魅力的な現物市場を提供する
- 上記①,②により、豊かな社会の実現に貢献することを目的とする
■新市場区分における基準の考え方
- 各市場で、時価総額(流動性)やコーポレート・ガバナンス等の定量的、定性的な基準を設ける
- 各市場において、新規上場基準と上場維持基準は原則として共通化
- 現在のような市場替えは出来なくなり、各市場区分は独立したものとなる
■プライム市場の上場基準
- 時価総額:250億円以上、流通株式ベース時価総額:100億円以上が必要
- ガバナンス:大株主が特別決議の2/3を占める65%以上保有している場合は、上場不可
- 経営・財務指標:純資産が50億円以上、かつ売上高100億円以上or直近2年の利益合計25億円以上が必要
- 現在の東証一部企業約2,200社のうち、この条件をクリアできない企業は約600社
■スタンダード市場の上場基準
- 時価総額:10億円以上
- ガバナンス:大株主の保有比率制限は、海外主要取引所と同程度の75%以上保有している場合は、上場不可
- 経営・財務指標:債務超過でないこと、かつ直近の利益が1億円以上が必要
- 現在の東証二部企業に多い中堅企業向けがこのスタンダード市場に該当することを想定
■グロース市場の上場基準
- 時価総額:上場10年後に40億円以上(達成出来ない場合は、スタンダード市場で新規上場申請?)
- 流動性:5億円以上
- ガバナンス:スタンダード市場と同等
- 現在のマザーズ、ジャスダックの新興企業を想定
■新市場区分への移行プロセス
- 21年2月末:市場関係者からのパブリックコメント(意見公募)を経て再編案を正式決定
- 21年春:コーポレートガバナンス・コード改訂(プライム市場の企業対象に独立社外取締役を全体の1/3とすることや女性/外国人/中途採用者等の登用、情報開示や監査の透明性の向上等が示される予定)
- 21年6月末:移行基準日
- 21年9-12月:上場企業が希望する上場区分を選択、各種申請手続き実施(新区分の上場基準を満たさない場合でも、新基準の適合に向けた計画書を提出することで猶予期間あり)
- 22年1月:東証が各新市場の企業一覧を公表
- 22年4月1日:一斉移行日
■東証再編に関する個人的感想
最近は、よくわからない会社がいつのまにか一部上場企業になっていたり、東証一部上場企業のステータスを落とすような先日のCasa(7196)のような不祥事(パワハラ報道)もあったりするので、基準を見直すことは非常に良いことだと思います。
ただ、今回の再編は”企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上”を目的としているものの、政策保有株の圧縮を目的とした基準の適用(私はかつての持ち合い株は、長期的な安定株主を確保出来る点で肯定派です)、事業のことが分かっていない可能性が高い社外取締役や外国人取締役の登用等、ますます長期的な視点で経営が出来なくなる要素もあるような気がします。
個人的には、プライムという呼び名もいまいちしっくりきませんし、東証一部、東証二部(時価総額250億円以下の一部・二部・JASDAQ銘柄)、東証グロース(マザース銘柄)の3つに再編した方がいいのではないかとの印象を持ちました。
現在、東証一部上場企業ではあるものの、プライムに残れない企業が出てくるとその会社の株価への影響はもちろんですが、人材採用、社員が住宅ローンを組む際の審査等、様々な面で影響が出てくる可能性があるので、1年後の各新市場の企業一覧公表に要注目です。
引用:日本証券取引所グループWEBサイト