経営センスの論理 – 楠木 建 (著)

今日も祝日で株式市場がお休みなので、過去に読んだお勧めの本を紹介します。

■経営センスの論理 – 楠木 建 (著) 

以下、面白かったトピックと個人的な感想です。

<スキルだけでは経営できない>

スキルというと、ファイナンスのスキルとか会計スキル、プレゼンスキル等あげていけばキリがありませんが、これらは全て担当者のレベルで必要になるものであり、これらをいくら鍛えたところで、優れた経営者にはなれず、スーパー担当者(=代表取締役社長担当者)になるだけと楠木さんは言っています。

これに当てはまる日本の大企業の雇われ社長は多いのではないかと思います。自分の担当業務を粛々と真面目にこなしていたら、いつのまには出世のゴールの社長になっていたというパターンです。

ソフトバンクやファーストリテイリング、日本電産がなぜ業界で存在感を示しているかというと、やはり経営センスのある創業社長が第一線で自ら会社を引っ張っているからなのではないかと思います。たぶんセンスがなければ、ここまで大きくなる前に潰れてしまっていたのではないでしょうか。

また、お家騒動の結果、経営状態がボロボロになってしまい未だに経営不振に陥っている大塚家具ですが、大塚久美子社長もスキルはあってもセンスがなくて、特に従業員/お客さんの気持ちを想像する力が欠如しているのではないか思います。

私の父も昔は大塚家具の顧客でしたが、大塚久美子社長になってから、何一つ連絡なく、お客さんを大切にする気持ちがないとご立腹で、二度と大塚家具で家具は買わないと言ってました。大塚家具にとって、昔築き上げた顧客との関係性は非常に重要な資産なのに、それを無視してニトリやIKEAと張り合おうとする低~中価格帯の家具に力を入れていくなんて方針を発表してしまうと、高級家具としての信頼性から大塚家具で家具を買った昔の顧客は離れていってしまうし、二度と大塚家具で買おうとは思わないでしょうね。低~中価格帯の家具もやるのであれば、別に子会社を立ち上げるかサブブランドでやるべきだったと思います。昔からのお客さんの気持ちを想像する能力があれば、もう少し違ったやり方があったのではないかと思います。

 

<イノベーションは進歩ではない>

本の中で、楠木さんは、イノベーションと進歩(Progress)は全く異なる概念だと言っています。例えば、スマホがますます軽くなる、画面が有機ELになる、カメラの性能がアップする等は全て技術の進歩ですが、イノベーションではなりません。イノベーションの本質は、「非連続性」にあり、スマホの機能アップは、今の延長線上に何かを進歩させているだけで、「連続的に」価値が向上しているだけとのこと。

こう考えると、2007年にiPhoneを発売してイノベーションを起こしたappleは、ジョブズが生きている間は、iPadやApple Watch(ジョブズが生きている時に患者と医療の架け橋となるデバイスとしてApple Watchの開発を推進したと言われているそうです)等非連続なものを出しましたが、それ以降、連続的に価値を向上させる製品しか出していないような気がします。改めて、スティーブ・ジョブズという天才が若くして亡くなってしまったことが人類の損失だったことを思い知らされます。

 

<「過剰英語」への過剰対応>

私が大学院に通っていた時、ゼミの先生との会話の中で、グローバル人材とはなんぞや、という話題を議論したことがありました。多くの日本企業が優秀なグローバル人材を採用したいと言っていますが、そのように言っている採用担当者でさえも「じゃあグローバル人材ってなんですか?」と質問されたら答えられない人もいるのではないかと思います。

当時、私と先生の議論では、世界どこで仕事をしても一緒に仕事する人のレベルに合わせて自分の対応を変えることが出来る人なのではないかとの結論になりました。つまり、英語がネイティブなアメリカ人やイギリス人が、ノンネイティブな仕事相手に対して、気遣いせず早口で難しい単語を連発しながらコミュニケーションしてきたら、その人はいくら英語が上手でもグローバル人材とは言えないのではないか、というものでした。

楠木さんもこの本の中で、ほぼ同じようなことを言っていて、グローバル化が進むと、「とにかく英語力!」とばかりに、英語に対する構えの過剰やその裏返しとしてのマニアックな英語習得の努力が、かえってグローバル化を困難にしているのではないか、そしてグローバル化に求められるコミュニケーション・スキルは、英語力ではなく、下手くそな英語でもコミュニケーションがうまくいくこと、一緒に仕事出来ること、仕事をして成果を出すことが目的なのであって、英語力をあげることではない、と言っています。まさに私が大学院に通っていた時に先生と議論し、出した結論と同じことを言っています。

 

上記以外にも、「大学生が選ぶ就職人気企業ランキング=ラーメンを食べたことのない人による人気ラーメン店ランキング」、「オリンピックの成績を戦略論にこじつけて考える」等、読みやすくて面白いトピックがたくさんありますので(3-4時間で読み終ります)、ぜひ機会があればご一読下さい。

 

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