荒木飛呂彦の漫画術  – 荒木先生の暗黙知の形式知化

週末は株式市場がお休みなので、過去に読んだお勧めの本を紹介します。

■ 荒木飛呂彦の漫画術  – 荒木 飛呂彦 (著)

私が小学生の時に連載が始まり、それ以来ずっと大好きな漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の作者 荒木飛呂彦氏が漫画家を目指す人に対して、王道漫画とは何かを語る本です。

なかなか認められなかったデビュー前後の苦しい時期に何を考え、連載開始後に悩んだこと等人にはあまり公表したくないことも含め、余すところなく語っている非常に興味深い内容でした。

 

個人的な印象では、肉体と肉体をぶつけ合う漫画が主流の少年ジャンプの中で、頭脳戦を中心とした独特な世界観の漫画を感覚的に描く天才肌の方だと思っていたのですが、この本には、若いころの挫折や出遅れたことからくる焦り、またデビュー作での失敗等、またそれをどのような工夫と考え方で乗り越えてきたかが赤裸々に語られています。

この本を読むと、荒木先生が決して天才ではなく、考えに考え抜いて細かな点まで計算した上で漫画を描いており、作品に妥協を許さない大変な努力家であることが理解できます。

 

『これはある意味、マジシャンが手品の種を明かすようなところもあり、本当は隠しておきたい伝家の宝刀も含まれています。これまで独占してきたアイディアや方法論といった企業秘密を公にするのですから、僕にとっては正直不利益な本なのですが、それでも書くのは、それを補って余りあるほどの伝えたい思いがあるからです。

この本は、いわば僕にとって漫画界への恩返しのようなもので、今まで学んできた「漫画の王道」を次の世代に伝えることによって、これまでの漫画を超えるような作品が生まれてきて欲しいと願っています。これからの漫画界の繁栄につながってくれるのであれば、それにまさる喜びはありません。』

 

上記は前書きの一節なのですが、荒木先生ほどの大御所になると、普通は自分のノウハウや技術は感覚的なものだからと外部には公表せずブラックボックス化し、自分の地位を守ろうとする人が多い中、業界を更に発展させるために自分の経験やノウハウを言語化しています。

これはまさに紳竜の研究の紹介の際にも紹介した、野中郁次郎先生の知識創造論のSECIモデル(暗黙知➡形式知)にほかなりません。

 

経営学では、マーケットリーダー企業は、自社の繁栄のみならず、業界を発展させることが使命だと考えられています。荒木先生が今回ご自分の暗黙知を言語化し、形式知化することで漫画界が更に発展していくことを願っているというのは、まさにマーケットリーダー的ふるまいだと思います。

あとがきで荒木氏は、「この本は、漫画家を目指すもしかすると、どこかにいるたったひとりのために書かれた本なのかもしれません」と述べていますが、ジョジョを読む際にまた異なる視点で楽しむことができ、作品としての完成度の高さを改めて感じるのではないかと思いますので、漫画家を目指している方でなくともジョジョ好きの方にはおススメです。

 

余談ですが、先日還暦を迎えた荒木氏が若々しすぎると話題になってました。まるで石仮面をかぶったかのような若々しさですね。

 

 

 

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