会社の値段  – 森生 明

週末は株式市場がお休みなので、過去に読んだお勧めの本を紹介します。

■ 会社の値段  – 森生 明 (著)

 この本は、2005年のライブドアのニッポン放送買収や村上ファンドが世間を騒がせた後に発売された本です。著者の森生さんは、興銀やゴールドマン・サックスにてM&Aアドバイザー業務に従事していた方で、実務経験をベースにM&Aの本質や会社の値段、企業価値算定等、M&Aの全体像を説明してくれています。14年前の本ですが、内容は古びておらず今読んでも非常に参考になります。やっぱり原理原則は不変ということですね。

 

<企業価値算定>

企業価値算定に関しては、以前紹介した「なぜか日本人が知らなかった新しい株の本」と同じことを言っており、「永遠に毎年生み出す利益(キャッシュ)の合計額がこの会社の値段となる、これが企業価値算定の基本。つまり”企業価値=当期純利益/期待利回り”となる」ということを金の卵を産むガチョウに例えて分かりやすく説明しています。


 <PERと期待利回り>

本書では、PER(Price Earning Ratio、株価収益率)と期待利回りとの関係について、面白い観点で説明してくれています。

  • PER = 株価/一株当たり利益

分母と分子に発行株式数をかけると

  • PER = 株式時価総額/当期純利益

変形すると株式時価総額は、

  • 株式時価総額(会社の値段)= 当期純利益 × PER・・・①

となる。一方、企業価値は上記で述べたように

  • 企業価値(会社の値段)= 当期純利益/期待利回り・・・②

となるので、① = ②となる。両辺に当期純利益

  • 期待利回り = 1/PER

となり、PERの逆数が現在価値を算出する際に使用する期待利回りとなります。

現在価値を算出する際の期待利回りの算定は難しく、DCFはWACCの設定次第で大きく変動するので算出された企業価値には意思が入っており、あまり意味がないと考える人も多くいます。しかし、どの企業も(赤字企業以外は)PERが分かりますので、その逆数を計算すれば期待利回りがわかるということです。この点は気付いていない人も多くいるのではないでしょうか。

ただし、コロナ前の日経平均のPERは約14倍だったので、その逆数は7.1%となるので特段違和感はありません。一方、グロース株のPERは大きな倍率となることがあります。例えばPER=100になると逆数の期待利回りは1%となりますが、グロース株だと逆にリスクも大きくなるような気がするのですが、なぜ期待利回りが1%と非常に小さいものになってしまうのかよくわかりませんでした。ここでいう期待利回りは”WACC-市場成長率”なので、市場成長率が大きいのでしょうか?ファイナンスは難しいです。

 

上記以外にも多くの示唆に富む話がたくさんあるので、非常に面白いのでおススメです。

 

 

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